社外向けに周年イベントを行うことの意味

企業の周年イベントは「クローズドな雰囲気の社内行事」として開催される企業様が多いのではないでしょうか。招待するとしても、長年の取引先など「身内」感の強い相手ばかりというのが一般的でしょう。
もちろんそうした周年イベントがいけないわけではありません。
しかし、発想を変えて「外部に向け、発信するスタイルの周年イベント」を行うことで、意外な効果が得られるかもしれません。
周年イベントは社内向けか社外向けかで内容が変わる
周年イベントの本質とは何でしょうか。
これまで事業が継続してこれたことに対する感謝。従業員に対するねぎらい。もちろんそうした意味合いもあるべきでしょう。○周年という節目に気持ちを新たにし、未来へのビジョンや希望を掲げ従業員一同改めて結束を誓う。そういう周年イベントも良いものです
しかし「感謝」ということに目を向けると、もっと別に感謝するべき対象があるような気がします。
それは直接の顧客もそうですし、さらにその顧客を支えてくださるエンドユーザー、すなわち社会への感謝です。
特にコンシューマー向けの製品やサービスを提供している会社であれば、自社と社会との関わりに深く心を傾ける姿勢が重視されるのではないでしょうか。
そこで、これまで社内向けのみに周年イベントを開催してきた企業は、一度発想を転換してみて「社外向けの周年イベント」を企画してみてはいかがでしょうか。
社外向けの周年イベントの特徴
社外向け周年イベントとは、従業員のほかに取引先や顧客などを招いて開催するイベントです。イベント告知もニュースリリースや広告など、広く社会に向けて情報を発信していく必要があります。
イベントの内容も、「式典を行い、功労のあった従業員に対して表彰を行う」など社内向けの行事ばかりではいけません。社外の、そして一般の皆様にも興味や関心を持っていただけるようなプログラムを考える必要があります。
幾分のエンターテイメント性を考慮したり、社会に対する「おかげさまの感謝の気持ち」を伝えられたりする内容を考えてみましょう。
具体的には、華やかなアトラクションや動きのあるゲーム、スポーツなどの競技会のようなものを取り入れるといった方法があります。また、社外の人も参加できるクイズ大会などで豪華な景品を用意する、抽選で出席者全員を対象に豪華賞品をプレゼントするといった方法も考えられます。
社外向けに周年イベントを打つ効果
周年イベントを社外向けにリニューアルし、広く告知することにはどのようなメリットがあるかを考えてみましょう。
1.PR効果
「○○会社 ○○周年記念で○○などのイベントを開催」といった内容のニュースリリースを配信すれば、マスメディアや地域メディア、業界メディアなどに取り上げられる可能性が大いにあります。
会社の知名度や規模がそれほどでなくても、イベントの内容がユニークで話題性のあるものなら、メディアの注目を集めることはそれほど難しいことではありません。
これと同じことを宣伝広告でやろうと思えば、相当の費用がかかります。周年記念イベントに計上する予算も、宣伝広告費と割り切ればかなり思い切ったイベントが開催できるはずです。
2.信頼度の向上
創立何周年かにもよりますが、少なくとも創業から10年、20年の歴史を経た会社には自ずと社会的信用がついてきます。
少し古い資料ですが、中小企業庁が発表した「中小企業白書2011」では、企業の生存率は起業後10年で7割、20年で約半数という統計資料が報告されています。
つまり、一定以上の歳月に耐えて淘汰されずに生き残った会社は「企業としての強い生命力」を有していると考えられます。
社外向け周年イベントを広く告知することは「あの会社にはそんなに長い歴史があったのか」「この業界でそれだけの年数にわたって実績を重ねてきたのだな」など、改めて世間の人に認知していただき、信頼度を向上させる絶好の機会です。
3.企業文化への理解
社外向け周年イベントでは、イベントの内容や演出にも自社ならではの「こだわり」を持ちたいものです。
たとえば、自社の事業内容に関連の深い内容、独自の企業文化を象徴した内容、自社製品のアピールにつながるような内容といったものをイベントに盛り込めれば、イベントに関係した人やその記事を読んだ人の印象に深く残り、社名と企業文化、あるいは社風といったものを結びつけて長く記憶されるのではないでしょうか。これは単なる一過性の宣伝広告などとは異なり、質の高いPR効果に結びつくものと思われます。
社外向け周年イベントの例
ここまでにお伝えしてきたような社外向け周年イベントを実践した事例をいくつかピックアップしてご紹介ます。
株式会社カプコンは、「ストリートファイター」シリーズなどアーケードゲームで一世を風靡したゲーム会社ですが、2013年に30周年を迎えた際は全国各地で記念イベントを開催したほか、30周年記念ゲームの発売、ハウステンボスでの記念展示、「30周年記念サイト」の開設など多彩で多角的な記念イベントを開催しました。これらのイベントはPR効果に加えて実売・販促効果も期待できます。
コンシューマー向け製品のメーカーや販社などには非常に参考になる事例ではないでしょうか。
次に、これは一般的な企業とは少し背景が異なりますが、成蹊学園の100周年イベントの事例をご紹介しましょう。学校法人もまた多くの職員を抱える事業体であるという点は企業法人と共通しています。
このイベントでは、成蹊学園の創立者のドキュメンタリードラマを映画化し、上映するというユニークな催しがありました。俳優の鶴見辰吾さんや中井貴一さんなどが出演する、映画やテレビクオリティの本格的なドラマです。
このような映像コンテンツは、制作にあたってそれなりの費用や制作期間が必要になりますが、いったん制作すれば末永く記録・保存が可能で、繰り返し上映することができます。創業者のヒューマンドラマ、会社創立時のダイナミックな空気感といったものを伝えるにはこれ以上のものはないでしょう。
これをお読みになった経営者の皆さんのなかには「確かにそうしたイベントができれば素晴らしいが、当社にはそこまでの余裕はないな」とお感じになった方もおられるのではないでしょうか。
しかし、大切なのはこうしたイベントへの取り組みにかける創意と情熱です。卓越したアイディアや工夫によって、規模や費用面はどのようにでも調整できるはず。 どうぞ、せっかくの周年イベントを実り多きものにするよう、「社外向け周年イベントにする」という選択肢もご検討ください。